番頭デュークの業務日誌
デュークの最後の闘い
2010年12月04日
「続きは明日」と書いたまま、更新できずにすみません。
2日の日誌の続きです。
肺水腫は、早めに気づいたこともあり、それほどひどい状態ではなかったそうで、救急病院で注射を3本打っていただき、一気に楽になった様子でした。
熱も平熱のままでした。
肺水腫がひどくなると、熱が下がるのだそうですが、デュークにはそんな症状が出ていなかったのです。
朝になり、
心配で布団を厚着させていたので、どうやら朝陽が当たる部屋で暑くなったらしく、少し仮眠をとった店員Hが起きてリビングに来てみたら、ケージ内のおしっこシーツの上でペタンと伏せ状態で静かに寝ていました。
しんどいらしく、とろんとした目で店員Hを見上げます。
水を換えて、朝ご飯を差し出してみたのですが、起き上がるのもつらそうで、なんとか起き上がって食べようとする姿勢は見せたのですが、ちょっとだけ口をつけただけでほとんどを残しました。
救急病院の先生から、朝一でかかりつけの病院へ行って詳しい検査をしてもらうように言われていました。
検査の結果、肺水腫は早い処置のおかげで治っていました。
ただ、まだ呼吸が苦しそうなのを見て、先生が夕方まで酸素室に入院して濃度の濃い酸素を吸っておくと、夜楽に眠れるはず、とのことで、もちろんお願いすることにしました。
夕方、お迎えに行ったときも、少し目に力が出ていて、呼吸も楽になった様子に、本当にホッとしました。
その日は、そのまま帰って、またケージのベッドに寝かせました。
咳込むこともなく、静かに深く眠れたようです。
そして、翌朝・・・。
またおしっこシーツの上に寝ています。
2枚敷いていた隣のシーツには、大き目のおしっこのシミがひとつありました。
おしっこを1回できたようです。
ごはんを口の近くに近付けてみましたが、この日は昨日のように起き上がることもしません。
昨日病院でもらった心臓サポートの療法食を指で少しだけすくって、デュークの口に近付けてみましたが、口を固く閉じてイヤといわんばかりにソッポを向いてしまい、まったく食べようとしませんでした。
食べたくないの?
困ったね。
食べないと体力が落ちてしまう。
そのことがただただ心配でした。
水も飲みません。
注射器に少しだけ水を入れて口に流し込んでみましたが、イヤイヤをして口からエプロンにこぼれ落ちてしまうだけでした。
水もダメ?
ダメだよ。
水飲まないと死んじゃうよ。
薬だけでも飲ませなくては!と、つらいけれど、無理矢理、薬を口の中につっこみました。
苦しそうでしたが、なんとか薬だけは飲んでくれたようでした。
3時のおやつの大好きなプリンには、なんとか立ちあがって匂いを嗅いだものの、しばらく立ったまま見つめていましたが、食べられないらしく、淋しそうに、あきらめてまた元の場所に座り込んでしまいました。
プリンも食べないの?
あんなに大好きなおやつなのに・・・。
夕方のごはんまで様子を見ることに。
ひたすら同じ場所で、同じ格好で、眠っていました。
そして、夕方のごはん、指ですくって近づけても・・・
ダメです。
食べてくれません。
水も朝とおんなじ状態です。
これはまずい。
店員Hの心臓がバクバクしだしました。
絶対、これはまずいよ。
病院にすぐに電話をしました。
「ごはんも水も口にしません。点滴をお願いできますか?」
「すぐに連れてきてください!!」
慌てて車で連れて行きました。
また血液検査をしてみると・・・。
白血球が異常に高い数値を示し、しかも、腎臓値は振りきれてしまい、計測器で測れるギリギリの高い数値!
しかも、体温は、37度まで下がってしまっていました。
平熱が39度近いデュークには、あり得ない数値です。
それを聞いて、店員Hの頭は真っ白に。
そして、また心臓がさらにバクバク言いだしました。
心臓病の影響で、肺水腫を起こし、その治療のために使わざるを得なかった利尿剤、これが脱水状態で空になっていた腎臓を働かせすぎて、一気に腎不全を起こしてしまっていました。
デュークの内臓は、すでに老化でどこもボロボロだったのです。
心臓や肺を救うための治療で、今度は、腎臓が悲鳴をあげました。
昔から犬や猫を飼って見送った経験があったので、「腎臓の数値の上昇」「腎不全」という言葉が、どういう状態にあるのか・・・、それが、痛いほどわかっていました。
点滴を本当に少しずつ入れて、悪いなりに心臓と腎臓のバランスを見ながら治療するしかない状態であるとの説明でした。
否応なく、緊急入院が決まりました。
検査の結果を待つ間、デュークを看護婦さんが店員Hの腕に戻してくれたので抱っこしていたのですが、いつもならビビりのデューク、あっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロ、落ち着かず、まずこんなことをした試しがないのに、なぜかこの時は、わざわざ真上を向いて、ジ~~~~ッと店員Hの顔を、その切ないほど淋しげな目で見つめ続けたのです。
長い長い見つめ合いでした。
この時はもうグッタリした状態で、昨日2.4kgあった体重がたった一日で2.15kgまで急激に減ってしまっていましたが、グッタリと力が抜けてしまったデュークの体は、なんだかいつもより重いような感覚に襲われていました。
デュークのサイズからすると、たった一日でのこの体重の急激な変化は、かなりの衝撃です。
脱水がひどいことがなんとなく理解できました。
なんで、そんな目でそんなふうに見つめるの?
また元気になってお家に戻ろうね。
絶対元気になって、お家にもどっておいで。
絶対すぐに迎えに来るから・・・。
涙がデュークの顔にこぼれおちそうでした。
待合室で大勢の飼い主さんとワンちゃんが診察を待っていましたが、この時だけは、溢れる涙を我慢できませんでした。
そして、「お預かりします」という言葉に促されて、先生にデュークを託し、先生に抱かれて奥へと消えていく姿を見えなくなるまで立ちつくしたまま見送りました。
今でもこの瞬間が、スローモーションのように思い出されます。
これが、まさか、最後のお別れになってしまうなんて・・・。
まだそこまでは思いもよらなかったのです。
翌日は、病院が休診日だったのですが、
「午後3時に会いに来てください。休日でも別の先生がこの時間に来ているので。」
と言われて、一方で元気になったデュークと会えることを想像しながら、楽しみにしていました。
その一方で、胸騒ぎがおさまらず、
「何かあったら、何時でも結構ですから、絶対連絡ください。」
と先生に念押ししました。
「わかりました。」
もう後はお任せするしかありませんでした。
帰宅した後も、デュークのあのジ~~~~ッと店員Hを見つめた目が、繰り返し思い出され、胸騒ぎが鎮まることなく、この日も結局、朝まで心配で心配で、眠れませんでした。
彼は今、あのちっこいカラダで、病と必死で闘っている。
自分だけ安穏と眠るわけにはいきません。
だけど、もし明日帰ってこられたらなるべく見ていてあげたいから、少しだけでも今のうちに眠らなくては、と思って床に入り横になった、その瞬間でした。
握りしめたまま横になっていた携帯電話が、いきなりけたたましく鳴りだしたのです。
運命のあの日・・・。
11月2日の明け方5時40分のことでした。
今日はここまで。
また次回に続きます。
2日の日誌の続きです。
肺水腫は、早めに気づいたこともあり、それほどひどい状態ではなかったそうで、救急病院で注射を3本打っていただき、一気に楽になった様子でした。
熱も平熱のままでした。
肺水腫がひどくなると、熱が下がるのだそうですが、デュークにはそんな症状が出ていなかったのです。
朝になり、
心配で布団を厚着させていたので、どうやら朝陽が当たる部屋で暑くなったらしく、少し仮眠をとった店員Hが起きてリビングに来てみたら、ケージ内のおしっこシーツの上でペタンと伏せ状態で静かに寝ていました。
しんどいらしく、とろんとした目で店員Hを見上げます。
水を換えて、朝ご飯を差し出してみたのですが、起き上がるのもつらそうで、なんとか起き上がって食べようとする姿勢は見せたのですが、ちょっとだけ口をつけただけでほとんどを残しました。
救急病院の先生から、朝一でかかりつけの病院へ行って詳しい検査をしてもらうように言われていました。
検査の結果、肺水腫は早い処置のおかげで治っていました。
ただ、まだ呼吸が苦しそうなのを見て、先生が夕方まで酸素室に入院して濃度の濃い酸素を吸っておくと、夜楽に眠れるはず、とのことで、もちろんお願いすることにしました。
夕方、お迎えに行ったときも、少し目に力が出ていて、呼吸も楽になった様子に、本当にホッとしました。
その日は、そのまま帰って、またケージのベッドに寝かせました。
咳込むこともなく、静かに深く眠れたようです。
そして、翌朝・・・。
またおしっこシーツの上に寝ています。
2枚敷いていた隣のシーツには、大き目のおしっこのシミがひとつありました。
おしっこを1回できたようです。
ごはんを口の近くに近付けてみましたが、この日は昨日のように起き上がることもしません。
昨日病院でもらった心臓サポートの療法食を指で少しだけすくって、デュークの口に近付けてみましたが、口を固く閉じてイヤといわんばかりにソッポを向いてしまい、まったく食べようとしませんでした。
食べたくないの?
困ったね。
食べないと体力が落ちてしまう。
そのことがただただ心配でした。
水も飲みません。
注射器に少しだけ水を入れて口に流し込んでみましたが、イヤイヤをして口からエプロンにこぼれ落ちてしまうだけでした。
水もダメ?
ダメだよ。
水飲まないと死んじゃうよ。
薬だけでも飲ませなくては!と、つらいけれど、無理矢理、薬を口の中につっこみました。
苦しそうでしたが、なんとか薬だけは飲んでくれたようでした。
3時のおやつの大好きなプリンには、なんとか立ちあがって匂いを嗅いだものの、しばらく立ったまま見つめていましたが、食べられないらしく、淋しそうに、あきらめてまた元の場所に座り込んでしまいました。
プリンも食べないの?
あんなに大好きなおやつなのに・・・。
夕方のごはんまで様子を見ることに。
ひたすら同じ場所で、同じ格好で、眠っていました。
そして、夕方のごはん、指ですくって近づけても・・・
ダメです。
食べてくれません。
水も朝とおんなじ状態です。
これはまずい。
店員Hの心臓がバクバクしだしました。
絶対、これはまずいよ。
病院にすぐに電話をしました。
「ごはんも水も口にしません。点滴をお願いできますか?」
「すぐに連れてきてください!!」
慌てて車で連れて行きました。
また血液検査をしてみると・・・。
白血球が異常に高い数値を示し、しかも、腎臓値は振りきれてしまい、計測器で測れるギリギリの高い数値!
しかも、体温は、37度まで下がってしまっていました。
平熱が39度近いデュークには、あり得ない数値です。
それを聞いて、店員Hの頭は真っ白に。
そして、また心臓がさらにバクバク言いだしました。
心臓病の影響で、肺水腫を起こし、その治療のために使わざるを得なかった利尿剤、これが脱水状態で空になっていた腎臓を働かせすぎて、一気に腎不全を起こしてしまっていました。
デュークの内臓は、すでに老化でどこもボロボロだったのです。
心臓や肺を救うための治療で、今度は、腎臓が悲鳴をあげました。
昔から犬や猫を飼って見送った経験があったので、「腎臓の数値の上昇」「腎不全」という言葉が、どういう状態にあるのか・・・、それが、痛いほどわかっていました。
点滴を本当に少しずつ入れて、悪いなりに心臓と腎臓のバランスを見ながら治療するしかない状態であるとの説明でした。
否応なく、緊急入院が決まりました。
検査の結果を待つ間、デュークを看護婦さんが店員Hの腕に戻してくれたので抱っこしていたのですが、いつもならビビりのデューク、あっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロ、落ち着かず、まずこんなことをした試しがないのに、なぜかこの時は、わざわざ真上を向いて、ジ~~~~ッと店員Hの顔を、その切ないほど淋しげな目で見つめ続けたのです。
長い長い見つめ合いでした。
この時はもうグッタリした状態で、昨日2.4kgあった体重がたった一日で2.15kgまで急激に減ってしまっていましたが、グッタリと力が抜けてしまったデュークの体は、なんだかいつもより重いような感覚に襲われていました。
デュークのサイズからすると、たった一日でのこの体重の急激な変化は、かなりの衝撃です。
脱水がひどいことがなんとなく理解できました。
なんで、そんな目でそんなふうに見つめるの?
また元気になってお家に戻ろうね。
絶対元気になって、お家にもどっておいで。
絶対すぐに迎えに来るから・・・。
涙がデュークの顔にこぼれおちそうでした。
待合室で大勢の飼い主さんとワンちゃんが診察を待っていましたが、この時だけは、溢れる涙を我慢できませんでした。
そして、「お預かりします」という言葉に促されて、先生にデュークを託し、先生に抱かれて奥へと消えていく姿を見えなくなるまで立ちつくしたまま見送りました。
今でもこの瞬間が、スローモーションのように思い出されます。
これが、まさか、最後のお別れになってしまうなんて・・・。
まだそこまでは思いもよらなかったのです。
翌日は、病院が休診日だったのですが、
「午後3時に会いに来てください。休日でも別の先生がこの時間に来ているので。」
と言われて、一方で元気になったデュークと会えることを想像しながら、楽しみにしていました。
その一方で、胸騒ぎがおさまらず、
「何かあったら、何時でも結構ですから、絶対連絡ください。」
と先生に念押ししました。
「わかりました。」
もう後はお任せするしかありませんでした。
帰宅した後も、デュークのあのジ~~~~ッと店員Hを見つめた目が、繰り返し思い出され、胸騒ぎが鎮まることなく、この日も結局、朝まで心配で心配で、眠れませんでした。
彼は今、あのちっこいカラダで、病と必死で闘っている。
自分だけ安穏と眠るわけにはいきません。
だけど、もし明日帰ってこられたらなるべく見ていてあげたいから、少しだけでも今のうちに眠らなくては、と思って床に入り横になった、その瞬間でした。
握りしめたまま横になっていた携帯電話が、いきなりけたたましく鳴りだしたのです。
運命のあの日・・・。
11月2日の明け方5時40分のことでした。
今日はここまで。
また次回に続きます。